歌う時に息が続かないために自分の思い通りに上手く歌が歌えず、もどかしい思いをしたことありませんか?
私も以前はこの呼吸 (ブレス)の問題にとても悩みました。
ですが、ボイストレーニングに通ううちにブレスを上手にコントロール出来るようになりましたし、今ではどんな歌でもスムーズに歌えるようになりました。
間違ったブレスは、声帯に悪影響を及ぼしてしまいますし、その状態で声帯のトレーニングに励んでも、効果は期待できません。
そこで、この記事ではあなたにも声帯の機能をサポートするようなブレスを身に付けてもらうために、歌に必要な呼吸(ブレス)の仕方と4つのルール、練習法について解説していきますので是非参考にしてみてください。
歌に必要な呼吸(息)とは

まず、歌に必要な呼吸と言われたら一体どれくらいだと思いますか?
実は、息は少ない量でも、長いフレーズも複雑なフレーズも歌えます。
もしかすると歌う時は「息はできるだけたくさん吸うもの」と思い込んでいませんでしたか?
最初は信じられないかもしれませんが、歌うときはそんなにたくさんいらないというのが真実なんです。ポイントはこちらです。
歌うときに必要な息の量=話すときの息の量
例えば、あなたは普通に人と話すときに、呼吸を意識していますか?
吸うタイミング、吸い込む息の量など、間違いなく無意識だと思います。
でも、話すときは結構長いフレーズを一気にしゃべっていても、途中で息が足りなくなったりしませんよね。
そう、息は意識してたくさん吸う必要がないんです。
「歌うときは違うんじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし、歌うことと話すことは同じメカニズムです。
声を出すということは、歌うときも話すときも同じ仕組みだということなんです。
ただ、歌うときの方が、話すときより幅広い音域が使われるという点が違います。
そして、この音の高さを調節するのは「息」ではなく「声帯」です。
なので、息の量とは関係ないのです。
もしあなたが高い音を出すときに、息の量を増やすことや、息の圧力を増すことでコントロールしようとしているとしたら、悪いクセがついていますし喉にも良くないので、今すぐに改善していきましょう。
歌に必要な呼吸(ブレス)の仕方と4つのルール

さて、ブレスのトレーニングをする前に、まずは歌に必要な呼吸の仕方を知る必要があります。
なぜかというと、不自然なブレスは不自然な歌を生んでしまうからです。
「何か変だな」っていう歌をあなたも聞いたことあると思います。
または、もしかするとあなた自身が「何か変」な歌を歌っているかもしれません。
その「何か変」の原因は、変なブレスだったりするのです。
息の吸い過ぎ、吐き過ぎ、そして、息が止まっていたり……。
そのため、ブレスに関する4つのルールを紹介しますのでしっかり覚えましょう。
そして、あなたのブレスの状態をチェックしてみてください。
①息は思いきり吸わない
息を目いっぱい吸い込むと、その反動で必要以上の息が声帯に当たり、声帯に負担をかけてしまいます。
また、発声時に必要な声帯の閉門の妨げになると同時に、声にならない無駄な息が吐き出されることにもなります。
そして、1音目でほとんどの息が浪費されてしまいます。
フレーズの最後まで息が持たなかったりすると、「吸い込む息の量が足りなかったのでは?」と反省して、次のブレスでもっとたくさんの息を吸おうと頑張ってしてしまいがちです。
そうやってみんな罠にハマっていくんです。
息は口の奥に冷たい空気を感じる程度で十分です。
②吸った息は止めずに流す
吸った息をいったん止めて歌い出すクセは、①と同じ弊害を引き起こします。
息に必要以上の圧力を加え、大量の息が声帯を通過するので、発声時に必要な声帯の閉門の妨げになってしまい、声帯に負担もかかります。
そしてこれも同じく1音目で、ほとんどの息が無駄に吐き出されてしまうのです。
③吐く息に乗せて声を出す
当然のことのようですが、これが自然にできている方は少ないです。
声は流れる息に乗って出ていくのですが、声を出そうとしながら無意識に息を止めていることがよくあるんです。
あなたはどうでしょうか?
言い換えれば、吐く息の先端に声を乗せる感覚です。
言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、息と声が身体から一緒に解き放たれていく状態です。
息の主な役割は声を運ぶことですので、その役割を果たせていないと、息の意味がないんですね。
このことをイメージして声を出してみるだけでも あなたの声は随分変わると思います。
この、吐く息に乗せて声を出す感覚が身に付いたとき、あなたは正しいブレスをマスターしたことになります。
④息は吐き切ってから新たな息を吸う
息は吸うことより吐くことが重要です。
人間の身体は吸った息をしっかり吐き切ると、次に必要な息を自然と取り込んでくれるようになっています。
意識して目いっぱい吸おうと頑張らなくても、勝手に身体が必要な息を取り入れてくれるんです。
慣れていないうちはブレスのタイミングで吸うことばかりに気を使ってしまうのですが、実は逆で、「吐き切れているか」が重要なんです。
これはお腹を強く押して吐き出すという意味ではないので誤解しないでくださいね。
あくまでも自然な息の流れの中でのことです。
歌っている間、息が流れ続けているということです。
さらにこの機能のいい点は、ブレスのことばかり意識して歌う必要がないので、歌に集中できるということです。
「どこでブレスをするか」とか、「どれくらい息を吸うか」ということばかりに集中していては、いい歌は歌えません。
呼吸(ブレス)の流れをつかむ予備練習法

では、このブレスの4つのルールに従って、ブレスの予備練習をしてみましょう。
胸から上が映るくらいの鏡を見ながら行ってください。
姿勢は、椅子に座り、肩の力を抜いて、足の裏をしっかり床に着けた状態です。
予備練習
- 口から軽く息を吸います。
- 口の奥に冷たい息を感じたら止めずに吐きます。
- ゆったり吸って、ゆったり吐き出します。
この練習を、さらに下記の3点に注意しながら、息の音を立ててやってみましょう。
肩が上がらないようにする
肩が上がっているのは、息をたくさん吸えているようで、実はきちんと吸えていない状態です。
息を吸うときに、肩が上がらないよう気を付けましょう。
口から吸って口から吐く
息の流れを、口の高さと同じぐらいにイメージしてください。
吸い込む息の量は、口の奥に息が当たるのが分かる程度で十分。本当にわずかな息です。
息の流れが止まったり、途中で引っかかったりしないように気を付ける
息は連続して流れています。吐き出す瞬間にお腹に力が入るのはいけません。
お腹の動きは、ゆったりした息の流れと同じで、吸ったときはゆっくり膨らみ、吐くときはゆっくり凹んで(元に戻って)いきます。
よく分からない場合は、仰向けに寝てやってみましょう。
お腹を急激に膨らませたり、押したりしないように注意してくださいね。
呼吸(ブレス)をマスターする練習法

ブレスがゆったり、なめらかにできるようになったら、今度は、吐く息に乗せて声を出すトレーニングに移ります。
先ほどのブレスの練習にプラスして、息を吐くときに声を出す練習です。
練習
- 口から息と声が流れているのを感じます。
- 吐く息と一緒に「a(アー)」と声を出します。
それではこの練習をしながら正しいブレスが出来ているかどうか以下の5項目をチェックしてみます。
- ピッチが一定か
- 喉の引っかかりがないか
- 反動を付けていないか
- ビブラートが一定か
- 息と一緒に声が流れるか
続けて、以下のような悪い例になっていないかチェックしてみましょう。
- 声を出しながらピッチや響きが下がっていく
- 1音目で喉に引っかかる
- 1音目で極端に反動が付いてしまう
- 途中でビブラートが変わってしまう
- 息が止まっている、またはこもっている
ブレスは滑らかな連続した流れがポイントですので、息が止まったり、引っかかったりする場合や、まだまだお腹に力が入ってしまう場合は、繰り返し練習しましょう。
続いては良い例です。
- 一定の高さでピッチが維持できている
- 喉に引っかけずにスタートできる
- 反動を付けずにスタートできる
- ビブラートが一定している
- 息と一緒に声が流れている
力が抜けてくると、「あっ、なんか楽に声が出るようになってきた!」と思う瞬間がやってきます。その感覚が訪れる日まで、毎日コツコツ繰り返してください。
1日15分を目安に続けてみましょう。例えば、朝、昼、番と5分ずつ3回に分けてやっていただいても構いません。1日でトータル最低15分が目安です。
上記の良い例のように、息の流れが連続した滑らかに状態になったらオッケーです。
まとめ
今回は、歌に必要な呼吸(ブレス)の仕方と4つのルール、練習法について解説しましたが、いかがでしたか?
今まであなたが持っていたブレスのイメージとは全然違っていたのではないでしょうか。
最後にもう一度、ブレスに関する4つのルールのまとめです。
ブレスに関する4つのルール
・息は思いきり吸わない
・吸った息は止めずに流す
・吐く息に乗せて声を出す
・息は吐ききってから新たな息を吸う
そして、冒頭でもご紹介しましたが、「歌うときに必要な息の量=話すときの息の量」というこの真実をまずは頭でしっかり理解し、これからは歌う時も会話をするときのような無意識なブレスで歌いましょう!