歌のためのブレストレーニングをしている方で、息を吐く時にお腹の押しグセがある方がよくいらっしゃいます。
「一体なんのことやら・・・」という方もいると思いますが、結構自分では気付かずにこの癖をつけてしまっている人も多いです。
声帯は大きくても2.5cmほどのもので、息はその声帯を通過していくのですから、どう考えてもお腹を押したりするほど力を入れて大量の息を押し出す必要はありません。
そして、高音になればなるほど声帯のストレッチを強め、息が通過する声帯の隙間(声門)を小さくしていくので、さらに息は少なくていいと言うことになります。
あなたが思い込んでいるほど大げさな息は必要ないんです。
そこでこの記事では、歌のブレスにおいて、息を吐く際にお腹の押しグセがないか確認する方法とその解消方法について解説していきます。
歌う時や息を吐く時にお腹の押しグセがないか確認する方法

息を吐くときにお腹を極端に押してしまうクセは、自覚症状がない場合もあります。
ここではまず、あなたにお腹の押しグセがないか確認してみましょう。
お腹の押しグセ確認
- お腹に手を当てて、口から軽く息を吸い止めずにゆっくり吐き出すのを繰り返します。
- この時にお腹がどうなっているのか、動きを手で確認しましょう。
このとき、お腹に極端に力が入っていないかどうか、お腹の動きをチェックします。
息を吐き出すときにお腹に極端に力が入らない
息を吐き出すときに瞬間的に力が入る、激しく押すなどの反応が感じられる
いかがでしょうか?気づかないうちに悪いクセがついてはいなかったですか?
もしあなたにお腹の押しグセがある(悪い例のようになってしまう)場合は、次の解消方法を試してみましょう。
お腹の押しグセがある場合の解消方法

お腹の押しグセがあると判明したあなたは、その極端なブレスから卒業して、もっとリラックスした緩やかなブレスを学ぶ必要があります。
極端にお腹を押すことであなたのブレス、さらにはあなたの歌が苦しいものになっているからです。
せっかく頑張っているのに、声に悪影響を生じさせているのは残念ですよね。
楽な歌は、もっと楽なブレスから生まれます。
さあ、早速以下の4つの解消方法でその悪いクセを直しましょう!
- 吸う息の量を減らす
- 息をゆったり吸って、ゆったり吐く感覚で行う
→すると、この息の流れと同じように、お腹もゆったり動きます。瞬間的に力が入ることはありません。これでもお腹が極端に動いてしまう場合は、次の方法も試してみてください。 - いったんお腹の動きは忘れる
→お腹を動かさない、使わないよう心掛け、全身の力をできる限り抜いて練習します。 - ウエストを左右にひねりながらやってみる
→ウエストをひねることによって、瞬間的に力が入ることを防げます。あまり勢いよくひねるとブレスに反動が付いてしまいますので、ゆっくりと、でも止まらず連続して左右にひねってみてください。
お腹の押しグセは直すのに時間がかかります。
今まで長年培ってきた習慣ですので、一瞬でポン!と抜けることはありません。
日々「力を抜く」と意識して繰り返す地道な努力が必要です。かなり地道です。
そして、今の力みが100だとしたら、徐々に90になり80になり50になり……という具合に抜けていき、最終的にリラックスした自然なブレスへと辿り着くんです。
何だか気の遠くなる話のようですが、あきらめないでくださいね。
あなたの声を自由にコントロールするために、とても大切なことですので。
お腹を押したらいけないってことは、運動はしない方がいい?

歌のブレスにおいてお腹の押しグセ(力が入るの)が良くないというと「運動や筋トレ(腹筋)もしない方がいいのでは?」という疑問を持つ方もいます。
結論からいうと、適度な運動はぜひ積極的に取り入れてください。
健全な声は健全な身体から生まれます。
不健康な身体からは生き生きとした声は生まれません。
お腹を極端に押してはいけないというのは、声帯のメカニズムの妨げになる無駄な息がいらない、つまり必要以上の息を出すことはしなくていいというだけであって、筋力のない弱々しい身体になれと言っているわけではありません。
なので、適度な運動をすることは歌うためにはとても大事ですね。
運動している人としていない人では、立ち姿の美しさも全然違ってきます。
腹筋・背筋が弱いとシャキッと立てないので、 ステージでの印象もマイナスになってしまいます。
ただし、特に気を付けてほしいポイントは、首周り。
ボーカリストはここを鍛えてはいけません。理由は息が通りにくくなるからです。ご注意くださいね。
まとめ
今回は歌のブレスにおいてよくありがちな癖の一つである『息を吐く時のお腹の押しグセ』について、確認方法や解消方法をご紹介してきました。
お腹の押しグセが強い人ほど、最初のうちは頭で理解できているのに、身体が思うように動かないというイライラを感じると思います。
しかし、あきらめずに「押さない」「力を入れない」「リラックス」とあなたの身体に指示を出し続けてください。
そうやって今までの間違った思い込みをすり替えていく作業が必要なんです。
悪い癖を直すのはとても根気のいる作業ですが、自分の歌にとってベストな呼吸となるように日々トレーニングしていきましょう!